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これが青森山田の練習だ!(卓球レポート2010.12) [吉田安夫]

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指導者は選手強化のエキスパートである一方で、よりよい練習環境を整えるために学校側や支援者と交渉する「政治家」の側面も持たなければならないと思っています。
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卓球レポート2010年12月号P.23

以前、「闘将」で、吉田先生が強くするための具体的なことは書いてないという言葉を使ったが、この卓球レポートの監督インタビューには、かなり吉田先生の本質的なところが書かれている。

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強いチームづくりの心得三カ条
その1、選手が卓球を好きになるよう、選手の可能性を信じる
その2、選手の手本となるよう、指導者があらゆる面で妥協しない
その3、選手の資質を見極め、計画と立てて練習に取り組む
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まず、その1について
吉田先生は、強くすることが好きにさせることだと考えておられる。実際その通りで、初心者の段階でも、勝てば卓球を好きになる。
選手の可能性を信じるという言葉があるが、先生は三信という言葉をよく使っておられた。

三信
1.監督は選手を信じろ
2.選手は監督を信じろ
3.監督も選手も練習を信じろ

というもので、監督が選手を信じるというのは大前提のことなのだろう。

その2について
実際、練習を見せていただいたときにも、以前書いたように、片時も先生は座っておられなかった。ずっと台のまわりを回って、声をかけたりそうじをしたりしておられた。このレポートにも書いてある通りである。
「妥協しない」という言葉については、以前、岩崎さんから、ほんとか冗談かわからないような話を聞いたことがある。
熊商の練習ではフットワークの練習が必ずあるのだが、熊商のレベルになると、フットワークが心地よいリズムで続いていく。その心地よいリズムに吉田先生はつい、うとうととしていた。(この時はきっといすに座っておられたのであろう)。岩崎さんたちは、先生の指示がないものだから、次の練習に進めず、ずっとフットワークをしている。1時間ほどたってもなかなか起きないので、選手たちは早く起きてほしいと思っているのだが、なかなか起きてくれない。やっと、気づいた先生は、眠っていた時間は自分の意識がないものだから、それからまた、30分の練習を指示した、というものだ。
岩崎さんは「吉田先生は練習には絶対妥協しなかった」という言葉を付け加えられた。つまり、決めた練習は必ず最後までやりとおさせておられたということだろう。

「政治家」の側面も持たなければならない、という点について。
吉田先生自身が「遠征などに行ったら、必ず土産を買って来ていた。生徒にも、ちょっとしたものでよいので、担任の先生などにお土産を買って来るように指示していた。自分も、校長先生の奥さんなどにちょっとしたお土産を買って来るよう心がけていた」というような話をされたことがある。
周りに認められると、部の行動で、周りの人の支援を受けやすくなるということだった。

「選手を練習に集中させること」について
三信でも紹介したが、「練習を信じろ」という言葉通り。以前、岩崎さんが練習が近づくとお腹が痛くなっていたという話は聞いたことがあったが、熊商の中でもエリート中のエリートと思われる渋谷さんでさえ、「自分も練習が近づくとお腹が痛くなっていた」と言われていたので、相当な緊張感のある練習だったと思われる。
つい先日、吉田先生の話を伺う機会があった。自分は規定練習には必ずつくが、自主練習には基本的につかない。しかし、最近の選手は自主練習をしなくなった、と言っておられた。青森山田でさえそうなのか、とちょっとびっくりした。
以前、私が山田で見せていただいた練習は、予想と大いに違って、緊張感の中でも、みんな卓球を楽しんでいる練習だった。今も、山田では同じような練習が行われているのだろうか。
今年のカデットも1年は山田どうしの決勝戦だった。(2年はエリアカどうし)
ただ、インターハイで思ったより苦戦したり、丹羽、町選手がそろっていても国体で負けたりするなど、山田を越える練習をするチームも少しずつでてきたのかもしれない。

ダブルスのペアリングについて
先生は左のエースと右のエースをつくれ、というような話をされていた。高校の団体戦のシステムから出た考え方だと思う。実際、左右に強い選手がいれば、それだけで、シングルス2つとダブルスがとれるので、高校の団体戦は絶対負けない。ペアリングとは別の話になるが、左の選手には、極端に台の中に立たせて、打てるボールは必ずレシーブから打っていくように言われた。もちろん、長いサービスを出されるときもあるから、その時のために、バックステップをとってドライブを打てるような練習もしておく、と言われた。

(まず)23ページ(のみ)を読んで思いつくことを書き並べたが、このページに限らず、今回のレポートの内容は、かなり吉田先生の考え方の本質にせまっているように思う。今回はわずか8ページの特集であったが、ぜひ、さらに吉田先生の言葉を聞き出して、もっと紹介してほしい。

闘将 [吉田安夫]

「闘将」吉田安夫

青森山田の吉田先生の本。
今回、闘将を読み直して、「他の人はどんな感想をもったのだろう」とamazonを検索してみた。すると、なんと新品は売り切れており、入手できなくなっているではないか。ショックを受けた私は、なんかあせって、何か残しておかなければ、と妙な使命感を感じ、このブログを立ち上げた。

他競技もあわせて、同じ高校スポーツ界の指導者で、インターハイ、国体、選抜をあわせて100回以上の優勝など、ありえない記録である。空前絶後。他競技も含めて、吉田先生の記録を追い越せる人はもう二度と現れないことだろう。
吉田先生ももう78歳。吉田先生のノウハウをなんらかの形で残してほしい。そんな気持ちで、今回この本を読み直した。そして、感想。

この本を買った人の大部分は「常勝青森山田」の秘密を知りたくて買ったのではないか。強いチームを作ろうと思って、この本を買った人は多いに違いない。ところが、この本には強くなる秘訣はまったくと言っていいほど載っていない。あっても精神的なことだけ。この本を読んでも、吉田先生の選手の育て方の具体的なことは何もわからないだろう。ひたすら吉田先生の記憶にそって(吉田先生の記憶はすごいらしい)淡々と、熊商、深谷、山田での歴史が書いてある。特に、固有名詞の多さはびっくりするほどだ。

いつか、岩崎さんが「自分は全日本で優勝したので、どんなことが書いてあるのかなあと楽しみにして読んでみた。すると、自分のことはあっという間に終わっていた」と冗談交じりに言っておられた。実際、ほんとにそんな感じ。特別なことは何にも書いてない。そんな本である。

表紙がひどい。吉田先生の頭に炎の王冠をかぶらせ、何を考えてこの表紙を作ったのかあきれてしまった。以前、「ザ卓球」という催しがあって、そのビデオを見たことがある。ワルドナー(あれ?パーソンだったかな?)とユーナムキュ(だったような・・・)に宇宙人の服みたいなのを着せて試合をさせていた。見世物としか見えないようなその催しを卓球界の人たちはこぞってほめたたえており、そのセンスにゾッとしたのを覚えている。その催しをほめちぎるコメントのひとつひとつに、「え?大丈夫?」と感じた。まさにあの感覚の表紙である。

以前、青森山田の練習を見学させていただいたことがある。三田村くんたちが1年生で衝撃のインターハイ優勝を飾って半年後くらいだったと思う。練習開始前にみんなで練習場のそうじをするのだが、今をとくめく(というイメージの)三田村くんたちが、そろって雑巾がけをするのである(なぜか宋くんだけは特別扱い(?)で雑巾をしていなかった)。そうじが終わるとみんなで台を並べるのだが、横からキャプテンの田勢くんが指示をして、それこそ1mmもずれないような感じできちんと並べていた。
吉田先生の練習はきっとぴりぴりした雰囲気なのだろうと思っていた。ところが、(もちろん緊張感はすごかったが)みんな楽しそうに、しかも真剣に練習していた。いいボールが入るとみんなでほめあう。今までいくつかの場所でいろいろな練習を見せていただいたが、未だにあの山田の練習を超える練習を見たことがない。昇り竜の勢いというのか、ほんとうにいい練習をしていた。
で、吉田先生は何をしていたか、といえば、ひたすら台の間を回って、声をかけ続けておれた。片時も休むことなく動き続けて、練習の間、まったく腰をおろすこともない。ひたすらぐるぐると回っておられる。ひまがあると、モップを持ち出して、床のそうじをされる。ほんとうにまったく休まれることがなかった。
ところが、そんな練習の雰囲気を感じさせる内容はこの本にはまったく載っていない。
吉田先生は卓球界の宝である。なんとか、吉田先生の指導のすべてをビデオや本にとどめておくことはできないものか。そんな想いをもちながら、この本を読んだ。

8章に「忘れ得えぬ人々」という項目があった。これまた、特別なことが書いてあるわけではないのだが、吉田先生がいろいろな方々に感謝しておられることがよくわかる文章だった。吉田先生ならではと感じた。

ところが、同じ本を読んでも、読み方が違う人がいた。名前はわからない。今回、インターネットでこの「闘将」の感想を探していたら、あるおもしろいブログを見つけた。「卓球で強くなりたい」http://takuron.sblo.jp/category/862834-1.htmlというブログで、たどたどしい日本語だったが、私よりしっかりこの本を(吉田先生の気持ちを)読み取った文章だった。

今、とにかく、少しでも多く、吉田先生のノウハウを残しておきたい。そんな想いでいっぱいである。そんな想いでこの文章を書いた。

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