卓球シングルス戦略&練習メニュー [練習法]

佐藤真二監修
日東書院

フットワークに関する練習法が50。
サービス練習が11。
レシーブ練習が8。
5球目攻撃が7。
4球目攻撃が7。
合計83種類の練習法が載っている。

フットワークは多球練習ではなくて、1球での練習を前提としているようだ。
とすれば、これらの練習ができることそのもので、けっこうなレベルでなくてはならない。
フットワーク部門は3つに分かれている。

1つめが基礎のフットワーク。
相手がバックでブロックするのを基本に、23種類が紹介してある。

2つめが正確に打ち分けるためのフットワーク。
これはコースの打ち分けの練習のため練習相手もかなりの技術水準が必要か。
14種類。

3つめが相手の攻撃に応じたフットワーク。
ランダムを入れてある。
13種類。


どれも写真もごく少なく、台の図がほとんど。濃縮したら、20ページには収まりそうだが、この練習をきちんとこなしてみないと本当のこの本の価値はわからないのかもしれない。

ほんとうにまったく関係ないのだが、
初版第1刷が2011年10月25日。ガロアの生誕200周年の日である。

ふぁいと!卓球部 [小説]

横沢彰  作
小松良佳 絵

絵がマンガみたいで、かわいい。(きらいな人はきらいかもしれないが・・・)
話の内容はよく聞くような(どこかで読んだような)話。

現在、強い選手はほとんどクラブ出身ではないだろうか。
中学校の部活動から始めて、トップクラスになれる人というのはどれくらいいるのだろう。
ひとむかし前でも、日本のトップは小学校からクラブで始めた人がほとんどをしめているのではないだろうか。

しかし、さらにもうひとつ前の世代では、卓球が強かった人のうち、かなりの人が中学校の部活動で卓球に初めて接したのではないだろうか。
そして、実は、今も卓球人口を支えるほとんどの人たちは、この中学校からの部活動で卓球に関わり始めた人ではないか。

この「ふぁいと!卓球部」は、読んでほのぼのとしてしまうさわやかな物語である。
なんか似たような話を思い出すような気がするかもしれない。
しかし、それでも、この読後感は何か心を豊かにさせる。

競技として卓球を追及している人たちが忘れてしまったような、素朴な「卓球が好きだ」「卓球部が好きだ」という感覚を思い出させてくれる。

主人公は「拓(たく)」中学1年生の男の子。
他に、同級生の純太、先輩の小山くん、瀬倉くん、そして主将の幸平くん。
不良の岩島さん、大須賀さん。
なんか頼りない沢田先生。

競技種目として卓球をしている人には、逆に夢のような世界かもしれない。
しかし、卓球を愛する心は変わらない。
好きな卓球に押しつぶされそうになっているあなたにこそ、この「ファイト!卓球部」読んでほしい。

どうも「どんまい卓球部」という続編(?)もあるらしい。
続きが読みたくてたまらない。

きっとこのブログを尋ねてきた人にとっては、場違いのような記事と思いつつ・・・

教える技術Ⅰ 第7章 持てる力を大きく伸ばすコーチ学 [指導法]

武田健

武田さんは関西学院をアメフトの常勝チームに育てた名コーチ。
わずか50ページほどの間に、コーチとしての心構えや考え方を凝縮して書いてある。
項目として

◎リーダーシップの条件
・人間関係を気づくための三つのポイント、共感・温かさ・純粋性
・相手の発信するものに共感しよう
・人間的温かさを持とう
・不純な温かさは有毒である
・チャンスを逃さず、寸暇を惜しんで知識を吸収する
・彼を知り己を知れば百戦殆うからず
・選手の意見に耳を傾ける謙虚な姿勢を持つ
・高等部の選手から教えられたこと
・細かいことを大切にする
・監督になったら考えること
・あと一歩で達成できる目標を決定する
・選手が理解できる言葉で説明し、結果をフィードバックする
・作戦の基本的条件は、選手の体力、能力、適性とコーチのフィロソフィー
・小さい身体でどう戦うか

◎選手と良い人間関係を築く
・「罪を憎んで人を憎まず」というが・・・
・一生懸命になると怒鳴ってしまうこともある
・「叱りすぎた」と感じたら素直に選手に詫びる
・選手の性格・背景まで理解し指導する
・「分かった、分かった」だけでは分かっていない

◎コーチングの理論
・教えられたようにしか教えられない
・叱られて育った私はコーチになると鬼軍曹になっていた
・ミスを犯さないような場面を作る
・良いプレーを増やせば悪いプレーは減る
・ネズミは「ご褒美」ほしさにバーを押す
・人間も「ご褒美」ほしさに努力する
・ファインプレーではなく進歩に対してほめる
・「よくなった」とすぐにほめる
・大学生が勉強しないのは教員が動機づけを怠っているから
・指示は具体的に分かりやすく、ポイントは一つだけに絞る
・やたらに英語は使わない
・「部分」の教え方と「全体」の教え方を併用する
・やさしいことから段階的に教える
・上手な手本を何回も見せる
・プリマックの原理
・嫌いな練習は好きな練習の前にする
・ほめた方が上達は早い
・上手になったら「ほめる」場合の要求水準を高くし、ほめる回数を減らす
・毎回もらえた「ご褒美」がもらえなくなるとやる気をなくす
・上手になるまで毎回ほめ、上手になったらときどきほめる

◎リラックス・プラス・イメージ
・不安と緊張は実力発揮の邪魔になる
・リラクセーション法を身につける
・イメージと結びつけてリラクセーションする
・不安の強さは対象の重要性と時間的距離で決まる
・不安のレベルを徐々に上げていく
・イメージ法の中で経験し自信をつける


中でも、コーチングの理論は、著者の専門性(心理学の先生)を生かして、どの競技にも参考になる。
その中で、具体的なチェックリストが載っているが、それもちょっと紹介しておく

1.
・外側の足を後ろに引く
・顔は正面の相手かボールを見る
・外側の手は外側の目の下におく

2.
・内側の腕を引いて低くスタート
・最初の4歩を全速で走る
・最後から2歩で止まろうとする
・8歩目の爪先は正面を向く

3.
・8歩目が地面についたら頭と肩で振り向く
・ターンしたら第一歩が直角に出る
・身体の重心が低くなっている

4.
・ターンしたらボールを見る
・ボールが手にはいるまで見つめる
・低いボールは両手の親指をつけてとる
・受けたボールを脇にかかえる
・指がボールの先にかかっている


どうですか。具体的でしょう。
また文章中に
コーチならば「どうすればいいのか」ということを選手に伝えなくてはならない。「速いスタート」というと具体性は多少出てくるが、「低い姿勢で飛び出せ」という方がより具体的だし、選手にもわかりやすい。「一生懸命にボールを受けろ」よりも「ボールが手の中に入るまでよく見て」という方が具体性がある。
のような言葉もある。

さらに、40ヤードダッシュの指導について
1.コーチの一人がスタートラインに立ち、「低く速く」とか「腕をV字に曲げて、後ろに速く引いて」とスタートについての注意をいい、
2.スタートラインとゴールの間にもう一人のコーチが立って「腕をふって」「膝をあげて」と叫んでランニング・フォームについての注意を与え、
3.ゴールの5ないし10ヤード向こう側に別のコーチが立って、走ってくる選手に「最後まで、最後まで」「ゴールまで全速力」と叫び、ゴールまで全力疾走した者には「よく走った!」というようにしたら、
チーム全員がゴールまで一生懸命に走るようになったのである。
という言葉がある。

実は武田さんはこの第7章とまったく同じような内容をもっと詳しく書いた著書があるので、機会があればそれも後日紹介したい。

卓球 多球練習法 [指導法]

藤井基男 水村治男 共著 ベースボールマガジン社

私にとっては、「卓球 短期上達法」と並んで、バイブルみたいな存在だった本。
多球練習について、具体的に書いてある。
その具体的さはというと、まず第1章の「道具をそろえる」というところから始まる。
ラケット、ラバーはもちろん、ボールの個数やボール入れ、ボール入れを乗せる台についても説明してある。
まあ、簡単に言うと、80球程度がはいる、まるい(安い)かご、という表現で、今なら100円ショップで手に入るようなものが紹介してある。

第2章では多球練習の効用。第3章でいよいよ具体的な方法が載っている。
例えば
1.握りは3個以内
2.握る、打つタイミングは?
3.ノッカーの位置
4.はずませるか
5.生きたボールを送る
6.ヤマカン始動を防ぐ
7.時間配分
8.よしよし、いいぞ!!
といった具合で、かけ声のかけ方まで載っている。
また、ヤマカン始動を防ぐためには1本交替と不規則の送球をする必要があるという、多球練習の一番基本的な考え方が、短い中にさりげなく書いてある。しかし、この考え方はすべての練習法に通じる本当に大事なものだと(当時)感じた。(もちろん、今でも)

その後は具体的な練習メニューに移り、タイプ別の練習メニューを紹介している。

今では近藤先生が多球練習の名手として有名で、軍手をつかってボールをつかまれる姿は有名になっている。何度か、近藤先生の多球練習の姿は拝見したが、さすがに、「すばらしい」としかいいようがない。球出しのテクニックもさることながら、声かけの大切さを感じる。

富士短期大学をたった2年で他の4年制大学に伍して勝つチームに育てたのは、著者の水村先生の多球練習あっての賜物だろう。(ただし、私自身は水村先生の多球練習を実際に見たことはない)
水村先生の練習風景は一度も見たことはないのだが、水村先生とコンビを組んだ西村先生の球出しは見たことがある。迫力満点だった。きっと、水村先生もあのような感じで出されていたのだろう。

実は、吉田先生の球出しも一度だけ見たことがある。下回転の短いボールを出されていたが、特に切れているわけでもなく、「普通のボール」を出されていたのが印象に残っている。たぶん、講習会の場面で拝見したと思うので、吉田先生がサービスで出される場面を見せてくださったのではないかと思っている。
ちなみに、(たぶん、その講習会の前後だと思うのだが)三浦君が、友だちに頼んで出してもらっていた多球練習の迫力は忘れられない。

高木先生は本来ペンであるが、多球練習では主にシェークハンドを使ってされているようだ。ビデオも拝見したことがあるが、やはり、その正確さや声がすばらしかった。NTに抜擢された頃の福原さんにもヘッドコーチとして球出しをされていたと聞いたことがある。福原さんのピッチの早さはすごいものだと、高木先生の球出しを見て感じた。

橋本先生がレディースの方々に球出しをされている場面を拝見した。小さな子どもを教えるときとはまた違った声かけなど、とても勉強になった。また、指示が的を得ていて、その数分(?)の指導で、それまでできなかったことができるようになる姿を見ると、これまたすごいとしか言いようがない。

まだ指導者としての実績を積まれる前の松下先生に講習会をしていただいたことがある。エクセルを使って、綿密に練習計画を立てておられて、その緻密さに感動させられた。
たぶん、全国大会2連覇などで、技術指導の優秀さはみなさんも知るところだろうが、球出しの技術はもちろんその練習や選手の育成に対する考え方がすばらしい。また、松下さんの指導者としてのすごさは伝える機会があるかもしれないので、(いつになるかはわからないが)気長にお待ちください。

というわけで、もう25年以上も前になるこの「多球練習法」。充分今でも通用するすばらしい本。ぜひ読んでいただきたい。

これが青森山田の練習だ!(卓球レポート2010.12) [吉田安夫]

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指導者は選手強化のエキスパートである一方で、よりよい練習環境を整えるために学校側や支援者と交渉する「政治家」の側面も持たなければならないと思っています。
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卓球レポート2010年12月号P.23

以前、「闘将」で、吉田先生が強くするための具体的なことは書いてないという言葉を使ったが、この卓球レポートの監督インタビューには、かなり吉田先生の本質的なところが書かれている。

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強いチームづくりの心得三カ条
その1、選手が卓球を好きになるよう、選手の可能性を信じる
その2、選手の手本となるよう、指導者があらゆる面で妥協しない
その3、選手の資質を見極め、計画と立てて練習に取り組む
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まず、その1について
吉田先生は、強くすることが好きにさせることだと考えておられる。実際その通りで、初心者の段階でも、勝てば卓球を好きになる。
選手の可能性を信じるという言葉があるが、先生は三信という言葉をよく使っておられた。

三信
1.監督は選手を信じろ
2.選手は監督を信じろ
3.監督も選手も練習を信じろ

というもので、監督が選手を信じるというのは大前提のことなのだろう。

その2について
実際、練習を見せていただいたときにも、以前書いたように、片時も先生は座っておられなかった。ずっと台のまわりを回って、声をかけたりそうじをしたりしておられた。このレポートにも書いてある通りである。
「妥協しない」という言葉については、以前、岩崎さんから、ほんとか冗談かわからないような話を聞いたことがある。
熊商の練習ではフットワークの練習が必ずあるのだが、熊商のレベルになると、フットワークが心地よいリズムで続いていく。その心地よいリズムに吉田先生はつい、うとうととしていた。(この時はきっといすに座っておられたのであろう)。岩崎さんたちは、先生の指示がないものだから、次の練習に進めず、ずっとフットワークをしている。1時間ほどたってもなかなか起きないので、選手たちは早く起きてほしいと思っているのだが、なかなか起きてくれない。やっと、気づいた先生は、眠っていた時間は自分の意識がないものだから、それからまた、30分の練習を指示した、というものだ。
岩崎さんは「吉田先生は練習には絶対妥協しなかった」という言葉を付け加えられた。つまり、決めた練習は必ず最後までやりとおさせておられたということだろう。

「政治家」の側面も持たなければならない、という点について。
吉田先生自身が「遠征などに行ったら、必ず土産を買って来ていた。生徒にも、ちょっとしたものでよいので、担任の先生などにお土産を買って来るように指示していた。自分も、校長先生の奥さんなどにちょっとしたお土産を買って来るよう心がけていた」というような話をされたことがある。
周りに認められると、部の行動で、周りの人の支援を受けやすくなるということだった。

「選手を練習に集中させること」について
三信でも紹介したが、「練習を信じろ」という言葉通り。以前、岩崎さんが練習が近づくとお腹が痛くなっていたという話は聞いたことがあったが、熊商の中でもエリート中のエリートと思われる渋谷さんでさえ、「自分も練習が近づくとお腹が痛くなっていた」と言われていたので、相当な緊張感のある練習だったと思われる。
つい先日、吉田先生の話を伺う機会があった。自分は規定練習には必ずつくが、自主練習には基本的につかない。しかし、最近の選手は自主練習をしなくなった、と言っておられた。青森山田でさえそうなのか、とちょっとびっくりした。
以前、私が山田で見せていただいた練習は、予想と大いに違って、緊張感の中でも、みんな卓球を楽しんでいる練習だった。今も、山田では同じような練習が行われているのだろうか。
今年のカデットも1年は山田どうしの決勝戦だった。(2年はエリアカどうし)
ただ、インターハイで思ったより苦戦したり、丹羽、町選手がそろっていても国体で負けたりするなど、山田を越える練習をするチームも少しずつでてきたのかもしれない。

ダブルスのペアリングについて
先生は左のエースと右のエースをつくれ、というような話をされていた。高校の団体戦のシステムから出た考え方だと思う。実際、左右に強い選手がいれば、それだけで、シングルス2つとダブルスがとれるので、高校の団体戦は絶対負けない。ペアリングとは別の話になるが、左の選手には、極端に台の中に立たせて、打てるボールは必ずレシーブから打っていくように言われた。もちろん、長いサービスを出されるときもあるから、その時のために、バックステップをとってドライブを打てるような練習もしておく、と言われた。

(まず)23ページ(のみ)を読んで思いつくことを書き並べたが、このページに限らず、今回のレポートの内容は、かなり吉田先生の考え方の本質にせまっているように思う。今回はわずか8ページの特集であったが、ぜひ、さらに吉田先生の言葉を聞き出して、もっと紹介してほしい。

スウェーデン卓球最強の秘密 [練習法]

イエンス・フェリッカ グレン・オースト 共著

TSPトピックス編集の貴重な本。
ツンストロム監督当時、ワルドナーやパーソン全盛期のスウェーデン卓球の考え方を書いてある。
7分半毎に攻守を交代する練習時間や当時ファルケンベリをよばれたフットワークなどが一世を風靡した。
このファルケンベリがこの本でははやぶさフットワークとして紹介されている。送り手はバック側に2本、フォア側に1本送る。受け手はバックハンド、回りこんでフォア、とびついてフォアの順番でフットワークを行い、2,3回続いたら、あとはフリーにするというものだった。
少し余談になるが、このフットワーク練習についてもう少し書いておきたい。
この本が出された頃、松富さんのクラブではマシンを使って、2本1本で回すのではなく、2本2本で練習をされていた。マシンに入る順番にも気を使っておられて、基本的に上手い者から4,5人組で打たせられていた。次の子は、前の子が動くフットワーク(足元)を見ながら、ボールを使わないフットワークをするのだが、この順番にさえ気を使って、効率的な練習を組み立てておられるのに大変感動したことを覚えている。なお、松富さんには直接聞き損ねたのだが、2本2本だと、左利きでもマシンで同じパターンで出し続けられることや、初心者には回り込みを省いて、バック側はバックで、フォア側はフォアで打たせられていた。それに加えて、フォア側をフォア側に回り込んでバックハンドで回り込む練習もされていたのも印象に残っている。これらのことを考えて2本2本にされていたのだろうな、と勝手に考えていた。
しばらくして、青森山田の練習を見学させていただいた時には、吉田先生がこの2本2本をされていた。なぜスウェーデンの2本1本でなくて2本2本だったかというと、フォアが大切なので数を増やしているというような話だったと思う。
いずれにしろ、どちらが先にしたとかではなくて、それぞれ独自にファルケンベリを変形した2本2本の練習をされていたのは、優れた指導者の考えには何かしら共通のものがあるときがあるのだ、と実感したものであった。
また、グリップについても印象が深く、フォアハンドグリップとバックハンドグリップの特徴と長所、短所が書いてあったのをよく覚えている。なお、このフォアハンドグリップ、バックハンドグリップという言葉自体も、この本で知ったような気がする。

以下、目次をあげておきたい。
1.男子卓球の世界の流れとスウェーデンの発展
2.スウェーデンナショナルチームの技術練習
3.卓球における戦術
4.体力トレーニング
5.スウェーデンナショナルチームの自信
6.ダブルス
7.バックハンド技術
付 スウェーデン卓球王国の興亡(荻村伊智朗)

なおこの付で、荻村さんは「スウェーデン卓球の没落」と題して、考えられる没落の原因を書いておられる。この2番目で「30歳を越えた選手の練習量や練習ぶりを、10代や20代前半の選手が「あれが卓球の練習だ。あれで世界に勝てるのだ」と信じたとき」ということを書いている。実際にあたっているのかどうかは知らないが、スウェーデン卓球の全盛期と思える1991年に書かれたこの本に、没落という言葉を使って予想しているのは、さすがに荻村さんはすごいなと感じた。

卓球王国 [雑誌]

卓球王国が発売されたときには、とにかく買いまくった。
書店売りの卓球雑誌は、私にとってははじめての経験で、この雑誌をつぶしてはならないとの思いから、書店にある都度に買っていた。号によっては5冊くらい買った本もあるのではないだろうか。人に貸したりあげたりしたものもあるが、今でも初期のものは数冊ある号も少なくない。

「TSPトピックス」が好きで、卓球ショップにおいてあるときにはいつも買っていた。変な表現だが、なんかほんとに卓球を好きな人が作っている雑誌と言う印象があって、おもしろかった。技術を見たければ、「卓球レポート」。ちょっとファンの心理をくすぐるのが、「TSPトピックス」、記録が細かくのっているのが、「ニッタクニュス」というイメージだった。
雑誌と言えるかわからないが「日本の千人」という日本卓球協会の企画があって、申し込むと時々冊子が送ってきていた。いつのまにか来なくなったが、どうしたのか自分でも覚えていない。
しかし、いずれも一般的な書店で手に入れることはできなかった。そこへ卓球王国が創刊になるということで、「やっていけるのか」という不安を解消するために、(私が不安になる必要などまったくなかったのだが)少しでも協力しようとして買っていたのが冒頭の状況になるわけだ。もっとも、今考えれば、卓球の愛好者がその地域で、ふと卓球王国を手にする機会をすべて奪っていたのかもしれない。しかし、当時はよかれと思ってやっていたこと。出版社の方、卓球ファンの方、ごめんなさい。

卓球王国の副産物として、卓球レポートが大型になりページも増えたことも書いておきたい。卓球レポートは、それまでもとても良心的な値段で内容の質もよかったのだが、競争によって、さらによいものとなった。卓球王国さんにも卓球レポートさんにも頭がさがる。

創刊号は福原愛さんがラケットをもってかわいく写っている。まだ、乳歯が抜けた時期だったのか、前歯が欠けている。月刊スキーグラフィックの別冊としてでているようで、680円。1997年だから13年前か。松下浩二さんのインタビューがあったり、アニマル浜口さん、井岡弘樹さんの記事があったり・・・。全日本では岩崎さん、小山さんが優勝。超練習法という連載では、倉嶋さんがモデルになっている。高島さんの戦術、遊沢さんのサービス、岡沢さんのメンタル、ルールの話から、動体視力の話まで、誠にあっぱれ!という充実内容である。福原さんの記事では、選手時代の松下雄二さんが写っている写真があり、協和発酵の記事には「マメマメ大王」とそのまめさが書かれている。



チャンピオンを目指す卓球 [指導法]

倉木常夫、湊勉、吉田和人、榊原浩晃著

小中高校の指導者の方々の指導法が具体的に書いてあり、大変おもしろくためになる。

特に「練習場がなく廊下で練習するとクロスが打てないので、台を斜めにおいた」というような話を書いておられた大橋先生の文章など、環境が似たような者にとっては、「そうだそうだ」と実感できることも多く、とても勇気づけられた。
公立の中学や高校で指導をしておられる方々にとっては、物理的にも時間的にも、また精神的にも厳しい環境の中で、工夫して強いチームを作られた指導者の方々の言葉は、とても感銘を受けるものではないだろうか。

以下、その指導者の方々のお名前をあげておく。
大島俊之助 栃木 大島TTS
両沢正子 東京 梅島クラブ
深谷秀三 福島 富久山卓球クラブ
山口敏 徳島 富田中学校
大橋広巳 愛知 東陵中学校
浜田美穂 高知 土佐女子中学校・高等学校
瀬木明 神奈川 野庭高等学校
井上雅晴 静岡 日本大学三島等学校
三輪了 愛知 中京商業高等学校
丸田哲生 宮崎 宮崎工業高等学校
近藤欽司 神奈川 白鳳女子高等学校
吉田廣光 青森 東奥女子高等学校

現在なら、どのような指導者の方のお名前が並ぶのだろうか。

個人的には
クラブでは城山ひのくにの松下先生、石田卓球の石田先生、本野町卓球の松富先生
中学では上磯の大橋先生、明徳の佐藤先生、中部東中の丸田先生
高校では青森山田の吉田先生、大岡先生、慶誠の高木先生
また、明治の平岡先生
などの話をうかがってみたいものだ。

なお、その後、チャンピオンの練習と称して、関正子さん、小和田敏子さん、五藤ひで男さん、星野一朗さん、水村治男さん、周愛光さんなどの経験談が載っている。
最後には理論編でしめてあるが、個人的には指導者の話が一番おもしろかった。

闘将 [吉田安夫]

「闘将」吉田安夫

青森山田の吉田先生の本。
今回、闘将を読み直して、「他の人はどんな感想をもったのだろう」とamazonを検索してみた。すると、なんと新品は売り切れており、入手できなくなっているではないか。ショックを受けた私は、なんかあせって、何か残しておかなければ、と妙な使命感を感じ、このブログを立ち上げた。

他競技もあわせて、同じ高校スポーツ界の指導者で、インターハイ、国体、選抜をあわせて100回以上の優勝など、ありえない記録である。空前絶後。他競技も含めて、吉田先生の記録を追い越せる人はもう二度と現れないことだろう。
吉田先生ももう78歳。吉田先生のノウハウをなんらかの形で残してほしい。そんな気持ちで、今回この本を読み直した。そして、感想。

この本を買った人の大部分は「常勝青森山田」の秘密を知りたくて買ったのではないか。強いチームを作ろうと思って、この本を買った人は多いに違いない。ところが、この本には強くなる秘訣はまったくと言っていいほど載っていない。あっても精神的なことだけ。この本を読んでも、吉田先生の選手の育て方の具体的なことは何もわからないだろう。ひたすら吉田先生の記憶にそって(吉田先生の記憶はすごいらしい)淡々と、熊商、深谷、山田での歴史が書いてある。特に、固有名詞の多さはびっくりするほどだ。

いつか、岩崎さんが「自分は全日本で優勝したので、どんなことが書いてあるのかなあと楽しみにして読んでみた。すると、自分のことはあっという間に終わっていた」と冗談交じりに言っておられた。実際、ほんとにそんな感じ。特別なことは何にも書いてない。そんな本である。

表紙がひどい。吉田先生の頭に炎の王冠をかぶらせ、何を考えてこの表紙を作ったのかあきれてしまった。以前、「ザ卓球」という催しがあって、そのビデオを見たことがある。ワルドナー(あれ?パーソンだったかな?)とユーナムキュ(だったような・・・)に宇宙人の服みたいなのを着せて試合をさせていた。見世物としか見えないようなその催しを卓球界の人たちはこぞってほめたたえており、そのセンスにゾッとしたのを覚えている。その催しをほめちぎるコメントのひとつひとつに、「え?大丈夫?」と感じた。まさにあの感覚の表紙である。

以前、青森山田の練習を見学させていただいたことがある。三田村くんたちが1年生で衝撃のインターハイ優勝を飾って半年後くらいだったと思う。練習開始前にみんなで練習場のそうじをするのだが、今をとくめく(というイメージの)三田村くんたちが、そろって雑巾がけをするのである(なぜか宋くんだけは特別扱い(?)で雑巾をしていなかった)。そうじが終わるとみんなで台を並べるのだが、横からキャプテンの田勢くんが指示をして、それこそ1mmもずれないような感じできちんと並べていた。
吉田先生の練習はきっとぴりぴりした雰囲気なのだろうと思っていた。ところが、(もちろん緊張感はすごかったが)みんな楽しそうに、しかも真剣に練習していた。いいボールが入るとみんなでほめあう。今までいくつかの場所でいろいろな練習を見せていただいたが、未だにあの山田の練習を超える練習を見たことがない。昇り竜の勢いというのか、ほんとうにいい練習をしていた。
で、吉田先生は何をしていたか、といえば、ひたすら台の間を回って、声をかけ続けておれた。片時も休むことなく動き続けて、練習の間、まったく腰をおろすこともない。ひたすらぐるぐると回っておられる。ひまがあると、モップを持ち出して、床のそうじをされる。ほんとうにまったく休まれることがなかった。
ところが、そんな練習の雰囲気を感じさせる内容はこの本にはまったく載っていない。
吉田先生は卓球界の宝である。なんとか、吉田先生の指導のすべてをビデオや本にとどめておくことはできないものか。そんな想いをもちながら、この本を読んだ。

8章に「忘れ得えぬ人々」という項目があった。これまた、特別なことが書いてあるわけではないのだが、吉田先生がいろいろな方々に感謝しておられることがよくわかる文章だった。吉田先生ならではと感じた。

ところが、同じ本を読んでも、読み方が違う人がいた。名前はわからない。今回、インターネットでこの「闘将」の感想を探していたら、あるおもしろいブログを見つけた。「卓球で強くなりたい」http://takuron.sblo.jp/category/862834-1.htmlというブログで、たどたどしい日本語だったが、私よりしっかりこの本を(吉田先生の気持ちを)読み取った文章だった。

今、とにかく、少しでも多く、吉田先生のノウハウを残しておきたい。そんな想いでいっぱいである。そんな想いでこの文章を書いた。

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