教える技術Ⅰ 第7章 持てる力を大きく伸ばすコーチ学 [指導法]

武田健

武田さんは関西学院をアメフトの常勝チームに育てた名コーチ。
わずか50ページほどの間に、コーチとしての心構えや考え方を凝縮して書いてある。
項目として

◎リーダーシップの条件
・人間関係を気づくための三つのポイント、共感・温かさ・純粋性
・相手の発信するものに共感しよう
・人間的温かさを持とう
・不純な温かさは有毒である
・チャンスを逃さず、寸暇を惜しんで知識を吸収する
・彼を知り己を知れば百戦殆うからず
・選手の意見に耳を傾ける謙虚な姿勢を持つ
・高等部の選手から教えられたこと
・細かいことを大切にする
・監督になったら考えること
・あと一歩で達成できる目標を決定する
・選手が理解できる言葉で説明し、結果をフィードバックする
・作戦の基本的条件は、選手の体力、能力、適性とコーチのフィロソフィー
・小さい身体でどう戦うか

◎選手と良い人間関係を築く
・「罪を憎んで人を憎まず」というが・・・
・一生懸命になると怒鳴ってしまうこともある
・「叱りすぎた」と感じたら素直に選手に詫びる
・選手の性格・背景まで理解し指導する
・「分かった、分かった」だけでは分かっていない

◎コーチングの理論
・教えられたようにしか教えられない
・叱られて育った私はコーチになると鬼軍曹になっていた
・ミスを犯さないような場面を作る
・良いプレーを増やせば悪いプレーは減る
・ネズミは「ご褒美」ほしさにバーを押す
・人間も「ご褒美」ほしさに努力する
・ファインプレーではなく進歩に対してほめる
・「よくなった」とすぐにほめる
・大学生が勉強しないのは教員が動機づけを怠っているから
・指示は具体的に分かりやすく、ポイントは一つだけに絞る
・やたらに英語は使わない
・「部分」の教え方と「全体」の教え方を併用する
・やさしいことから段階的に教える
・上手な手本を何回も見せる
・プリマックの原理
・嫌いな練習は好きな練習の前にする
・ほめた方が上達は早い
・上手になったら「ほめる」場合の要求水準を高くし、ほめる回数を減らす
・毎回もらえた「ご褒美」がもらえなくなるとやる気をなくす
・上手になるまで毎回ほめ、上手になったらときどきほめる

◎リラックス・プラス・イメージ
・不安と緊張は実力発揮の邪魔になる
・リラクセーション法を身につける
・イメージと結びつけてリラクセーションする
・不安の強さは対象の重要性と時間的距離で決まる
・不安のレベルを徐々に上げていく
・イメージ法の中で経験し自信をつける


中でも、コーチングの理論は、著者の専門性(心理学の先生)を生かして、どの競技にも参考になる。
その中で、具体的なチェックリストが載っているが、それもちょっと紹介しておく

1.
・外側の足を後ろに引く
・顔は正面の相手かボールを見る
・外側の手は外側の目の下におく

2.
・内側の腕を引いて低くスタート
・最初の4歩を全速で走る
・最後から2歩で止まろうとする
・8歩目の爪先は正面を向く

3.
・8歩目が地面についたら頭と肩で振り向く
・ターンしたら第一歩が直角に出る
・身体の重心が低くなっている

4.
・ターンしたらボールを見る
・ボールが手にはいるまで見つめる
・低いボールは両手の親指をつけてとる
・受けたボールを脇にかかえる
・指がボールの先にかかっている


どうですか。具体的でしょう。
また文章中に
コーチならば「どうすればいいのか」ということを選手に伝えなくてはならない。「速いスタート」というと具体性は多少出てくるが、「低い姿勢で飛び出せ」という方がより具体的だし、選手にもわかりやすい。「一生懸命にボールを受けろ」よりも「ボールが手の中に入るまでよく見て」という方が具体性がある。
のような言葉もある。

さらに、40ヤードダッシュの指導について
1.コーチの一人がスタートラインに立ち、「低く速く」とか「腕をV字に曲げて、後ろに速く引いて」とスタートについての注意をいい、
2.スタートラインとゴールの間にもう一人のコーチが立って「腕をふって」「膝をあげて」と叫んでランニング・フォームについての注意を与え、
3.ゴールの5ないし10ヤード向こう側に別のコーチが立って、走ってくる選手に「最後まで、最後まで」「ゴールまで全速力」と叫び、ゴールまで全力疾走した者には「よく走った!」というようにしたら、
チーム全員がゴールまで一生懸命に走るようになったのである。
という言葉がある。

実は武田さんはこの第7章とまったく同じような内容をもっと詳しく書いた著書があるので、機会があればそれも後日紹介したい。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。